かふうVol.449 建築資材ライブラリーへ取材協力させていただきました
「EM珪藻土」の記事が掲載されました。
調湿性・消臭性に優れた自然素材100%の塗り壁材
EM珪藻土
EM珪藻土は、未焼成の珪藻土に消石灰や焼成ホタテ貝などを配合した、自然
素材だけでできた塗り壁材です。左官仕上げ用とローラー施工可能なタイプの2
種類があり、調湿性、消臭性に優れた製品として住宅内のさまざまなスペースに
使われています。
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珪藻土本来の機能を最大限に発揮
珪藻土といえば、調湿効果や消臭効果のある自然素材として、世界的に知名度
の高い塗り壁材です。手軽に購入・施工できてDIYにも適した値頃なものから、
原料の選定や配合にこだわり、機能面や健康面などを追求したものまで、さまざ
まな製品が販売されています。
そもそも珪藻土とは、藻類の一種である「珪藻」という植物性プランクトンが、長い
年月をかけて堆積して化石になった、天然の岩石です。表面に微細な穴が無数
に空いた多孔質素材で、この穴が空気中の水分を閉じ込めたり逆に吐き出した
り、においのもとや有害物質を吸着する働きをしています。
珪藻土を製品化する際には、岩石を砕き粉末状にして、固化材や着色材、場合
によっては化学樹脂などを添加します。また岩石に含まれる不純物を取り除いた
り製品を安定化するために、珪藻土を焼成して用いるのも多く見られます。そうし
た細かな製法の違いが、製品ごとに機能や特徴が異なる理由の一つになってい
ます。
今回紹介する
「EM珪藻土」は、化学物質を一切使わず
100%自然素材でつ
くられている点が最大の特徴です。原材料の配合をみると、珪藻土の含有率は
58%と極めて高く、産地も北海道稚内に限定されています。国内に数ある珪藻土
の産地の中で、稚内産は純度が高く、比表面積が大きい=微細な穴の容積が大
きい=吸放湿機能が高いといわれています。
製法にもこだわりがみられます。珪藻土は焼成すると不純物を除去できる反面、
多孔質が失われ、本来備わっていた調湿性や消臭性などの機能が損なわれる
懸念があります。そのためEM珪藻土では、完全未焼成を徹底しています。
その他の配合素材としては、サンゴの化石である石灰石からつくられた消石灰
をバインダー(固化材)に使用しています。珪藻土の粉末をつなぎ合わせて固め
る役割を果たすとともに、消石灰はもともとアルカリ性を示す素材なので、優れた
防カビ性も発揮します。
焼成ホタテ貝は、除菌・抗菌力の強い材料として、食品をはじめ多くの分野で使
われています。消石灰同様にアルカリ性を備え、珪藻土に混合することで、VOC
(発揮性有機化合物)の吸着分解や殺菌作用を高めています。
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製品タイプは2種類 ローラー施工も可能
EM珪藻土は、株式会社OKUTA(本社・埼玉県さいたま市)が開発した製品です。
県内では「株式会社りーふ」(宜野湾市伊佐)が施工認定店として、住宅を中心に
採用を進めています。施主からの評価は高く、基本性能である調湿性、消臭性に
より清涼な空気感を得られることに加え、省エネ、耐火、吸音などの効果もみられ
ます。
製品タイプは2種類あり、左官仕上げで使う通常タイプと、ローラー施工が可能な
「EM珪藻土フラット」に分かれています。カラーバリエーションはそれぞれ6種類。
着色に使う顔料も、天然の土や石、炭から抽出しており、白色系、茶系を中心に
淡く優しい色合いがそろっています。
なお製品のEMとは、県内ではなじみ深い「有用微生物群」(Effective Microorganisms)
のことです。原材料の中には珪藻土と一緒にEMがバランスよく配合されており、
EMの性質の一つといわれる抗酸化作用を発揮して、住空間の質を高めてくれる
ことが期待されます。
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住宅への導入のヒント まずは収納スペースで効果を実感
「株式会社りーふ」の代表大木聡さんは、EM珪藻土を使い始めたきっかけにつ
いて、
「100%自然素材なので、妊婦や小さなお子様のいる家庭でも、安心して施工
できます。また他の塗り壁製品と比べると、機能性と経済性のバランスがとても
優れていました」と話します。
漆喰(しっくい)や珪藻土などの多くの塗り壁材は、職人の技量によって仕上がり
に差が出やすく、費用も割高になりがちです。その点、EM珪藻土の、特にフラッ
トタイプなら、「ローラー施工ができるので、職人の腕に左右されることなく、納得
できるレベルに容易に仕上がります」とのこと。
同社が手がける住宅では標準使用として、収納スペース内の壁面に施工してお
り、施主の要望があれば、オプションで他の居室にも使用しているそうです。
導入時に留意すべきは、「自然素材なので、木材の木目が一つ一つ異なるよう
に、乾燥すると場所によって色合いに変化が生じることがある」という点です。し
かしそれも、丁寧に施工されていれば、自然素材ならではの柔らかな風合いと
なって雰囲気ある空間づくりに貢献してくれるでしょう。またクロスの上から直接
施工できるため、リフォームの材料としても選びやすいということです。
※掲載内容は取材当時のものです。※